日本は超高齢社会に突入しています。
増加する高齢人口の問題は飲食店にもあてはまります。
すでに跡継ぎ問題や、お店を代替わりする前に店主がお亡くなりになってしまうなどが起こっています。
そんな時に問題になるのが「営業許可は相続の対象になるか?」というものです。
生前にお店を譲渡した場合と、相続で営業許可がご家族などに渡る場合とで手続きが大幅に変わってきます。
今回は相続で営業許可が渡る場合を中心に書いていきます。
営業許可は相続の対象
タイトルに書いてありますのでまずは結論を書きます。
営業許可は相続の対象となります。
営業許可の取り直しは不要です。
営業許可の相続のことを地位承継といい、すでにお持ちの営業許可を相続する方に引き継がせることをいいます。
ここでは例で下記のご家族の場合で見ていきましょう。
事例
店名:湘南横浜食堂
家族構成
・店主(ご主人)営業許可取得者
・奥様
・息子A
・息子B
家族経営の飲食店、経営に関わっているのはご主人、奥様、息子A
神奈川の湘南で昔から地元に愛されてきた湘南横浜食堂。
4人の家族のうち、3人が経営に関わってお店を運営してました。
ある日突然ご主人が倒れてしまい、残念ながらそのままお亡くなりになってしまいました。
生前、ご家族に事業譲渡などをしていなかった場合、営業許可は相続する人全員で決めたものが承継することにになります。
ここでポイントが「相続する人全員」というところ。
この場合奥様、息子A、そして経営に関わっていない息子Bの話し合いで決まることになります。
相続する人全員の話し合いにより、息子Aがお店を引き継ぐことが決まりました。
承継者が決まり次第、お店を管轄する保健所に遅滞なく手続きをすることになります。
相続したら手続きが必要
息子Aに営業許可が承継されることが決まった湘南横浜食堂。
その後は保健所に以下の書類を遅滞なく提出することになります。
- 相続による地位承継届
- 営業許可書
- 戸籍謄本
- 相続人が2人以上で、相続人全員の同意により地位承継者として選定された者にあっては、その全員の同意書
(事例では奥様と息子Bの同意書)
こんな場合は営業許可の取り直しが必要
相続の場合は営業許可の取り直しは不要と書きましたが、似たようなケースなのに営業許可を取り直さなければいけないものが2つあります。
湘南横浜食堂を例にしてみます
- 店主が生前に息子Aに店を継がせる
- 店主が他人に店を譲る
上記の場合だと地位承継にあたらず事業譲渡とみなされ原則営業許可の取り直しが必要になります。
営業許可の取り直しが必要ということは申請書の作成、図面作成、お店の検査等をまたやらなくてはいけません。
まとめ
地位承継と事業譲渡の違いをまとまると以下のようになります。
地位承継 | 事業譲渡 |
提出書類が少ない | 提出書類が多い |
お店の施設の再検査不要 | お店の施設の再検査が必要 |
相続人全員の話し合いが必要 | 店主の意思で決めれる |
生前に事業を譲渡する場合と相続で地位承継する場合だと手続きが大幅に変わってくることがお分かりいただけたでしょうか?
営業許可を引き継がせるという視点だけでいえば地位承継の方が提出書類も少ないですし検査等もないので引き継ぎやすいです。
しかし地位承継の場合だと店主が亡くなられて悲しみに暮れる中の手続きになりますので、私個人の考えでは生前に跡継ぎを決め事業譲渡をした方がご家族のご負担も減るのでいいのではないかと思っています。
当事務所では営業許可の事業譲渡から地位承継のお手続きのお手伝いもしておりますのでお問い合わせいただけたらと思います。